はい。
本記事は現代病理と偶像殺しをテーマとした学園ジュブナイルRPG「Caligura2 (カリギュラ2)」の感想文になります。
カリギュラ“2”というタイトルからわかる通り、本作は「カリギュラ」及び「カリギュラオーバードーズ」*1の続編にあたります。
筆者は当時前作未プレイだったのですが、ニンテンドーe-shopをぼんやり眺めていた際に存在を知り、キービジュアルに惹かれてそのまま予約購入に至った次第。
ナンバリングを見ると前作をやったほうがいいのか不安に思う人も多いと思いますが、前作未プレイの筆者がプレイしても充分に楽しめる作りでした。
この感想文ではネタバレは極力しない方針ですので、もし本作の購入を迷っている方がいらっしゃればここを判断材料の1つにしていただければ幸い。
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はじめに:ゲームの特色
本作は2021年6月24日にSwitchとPlayStation4から発売されたRPGである。
グラフィックやモーションはなんと言うか……なかなか拙い感じだけれど……
難点を挙げるならこのグラフィックくらいなもんで、そこさえ気にならないのであれば非常におすすめ出来る作品だった。筆者が半年かけてダイレクトマーケティング感想文を書くくらいには……
本作には大きな特色が2つある。
それは登場人物たちの隠された正体と、それをもとに有名コンポーザーが作成した個性豊かな楽曲たちである。
まず1つ目について。
現実での後悔を無かったことにできる理想の仮想世界「リドゥ」が舞台となる本作、登場人物たちは敵も仲間もほぼ全員が「後悔をやり直した姿」であり、その裏に暴かれたくない秘密を隠し持っている。
禁止されることほど暴きたくなる「カリギュラ効果」をタイトルに冠している通り、このゲームは登場人物たちが目を背けた生々しい現実をプレイヤーに暴かせ突きつけてくる尖った作品性が売りである。
とはいえ、尖ったテーマではあるものの全体を通して見れば個人の成長・仲間との絆・譲れない想いの衝突・苦悩と克服……などなど、シナリオの運びは良い意味で王道だった。
デリケートな題材を扱いながらも下手に道徳的でなく、かといって露悪趣味に走ることもなく、絶妙なバランスを保っていた。
2つ目について。
このゲームでは心の拠り所、求心力のツールとして歌が大きな意味を持っている。
メインビジュアルにデカデカと登場する謎の美少女「リグレット」、あるいは主人公の半身となる「キィ」はバーチャドール*2という歌を歌うことを目的として作られた存在である。
彼女らは歌によって人々を癒やし、そこに寄せられた信仰によって仮想世界リドゥで大きな力を得られるのだ。
そのため作中では敵対勢力の登場人物たちが作った曲という設定で、有名コンポーザーたちの手掛けたボカロチックで個性豊かな曲が複数登場するというわけである。
プレイヤーはさまざまな後悔を内包したリグレットの歌を各ダンジョンのBGM、戦闘曲として耳にすることになる。
歌詞付きの曲が複数登場すること、ダンジョンごとに曲のテイストと雰囲気がガラリと変わることも本作の特徴だ。
バトルに入るとシームレスにフィールドが展開され、曲もインストから歌付きに変化するのが演出として超好きだった。
特色2つには含まなかったが、本作はバトルも個性的でめちゃくちゃ楽しかった。
基本はコマンドシステムだが単調な戦闘にはならず、独特ながらシンプルで爽快感のある仕様になっている。
難易度調整も細やかなため戦闘が苦手な人も好きな人も満足できる仕様だったと思う。
これについて詳しくはバトルシステムの項にて。
あらすじ
「カリギュラ2」は、冒頭でも述べた通り「カリギュラ」及び「カリギュラオーバードーズ」の数年後の世界を舞台としている。
設定や出来事は地続きであるため前作ネタのようなものが随所に登場しているし、コレって前作のあの人では!?というキャラも存在する。当然と言えば当然だが、前作をプレイしていた方が楽しめるのは確か。
だが、「カリギュラ2」は「カリギュラ2」で話として独立しているので前作未プレイの方にもご安心いただきたい。
本作に登場してストーリーを動かしていく殆どのキャラクターたちは前作のキャラたちと赤の他人なわけだし、本編中の問題は本編中でしっかり解決しているし。
一個だけ前提として踏まえておいた方がわかりやすいかなと思った点は、敵組織のリーダー・ブラフマンの楽曲を担当したコンポーザーさんは前作の敵リーダー・ソーンの担当と同じ人だということ。とはいえこれも別に必須項目じゃない。
それはそれとして以下あらすじ。
舞台は仮想世界「リドゥ」。
後悔を持つ者が謎のバーチャドール「リグレット」の歌に導かれて訪れることになる「やり直しの世界」だ。
現実での後悔を忘れて思い通りの人生をやり直せるその世界で、人々は平穏な生活を送っていた。
しかしリドゥはただの理想郷ではない。
リグレットの歌に取り込まれた者は現実を忘れて精神をリドゥに囚われ、肉体は現実世界に残って心神喪失状態となる。
そこはあくまでかりそめの、緩やかな死に向かう空間なのだ。
そんな仮想世界を破壊すべく、未発表の新型バーチャドール「キィ」が単身リドゥに乗り込んだことで物語は動き出す。
キィが内部へ無理矢理侵入した影響でリドゥの仮想の空には亀裂が生まれた。
そしてその亀裂から現実世界の記憶が幾人かの住人の中に悪夢として流れ込んでいった。
そんな悪夢で現実を思い出してしまったリドゥの住人の一人が主人公だ。
主人公はひょんなことからキィと接触して身体を半分乗っ取られ、同じように悪夢を見た面々と「二代目帰宅部」(初代帰宅部は前作の人たち)を結成し、現実世界への帰還を目指すこととなる。
そしてそんな異分子を排除する為に立ちはだかるリグレットの楽曲提供者「オブリガードの楽士」たち。
彼らはそれぞれの思惑のもと、リドゥの平穏を守るために帰宅部と敵対する。
帰宅部たちは現実に置いてきた後悔と傷に悩み、葛藤し、時に楽士たちと衝突しながら、現実に戻るための活動を続けていく──
あらすじはこんな感じ。
用語が多いため長くなってしまったが、閉じ込められた世界からの脱出と考えれば作品構造は至ってシンプル。
しかし構造は明快でも解決は容易ではない。
この世界に囚われるのは皆どうにもならない後悔を抱いた人間たちだという問題が常に横たわっている。
帰宅部の面々も心のどこかで帰りたくない、現実を忘れてまたリドゥで平穏に暮らしたい、という葛藤を持っているのだ。
一時の虚構だとしてもリドゥに救われていたことは事実である。
それを真っ向から否定出来るのか。否定していいものか。
理想を打ち捨て、解決の無い後悔という現実に向き合う覚悟はあるのか。
そんな巨大な壁にどう折り合いをつけるか、向き合うのか、が本作の大きなテーマになってくるわけなのだ。
カリギュラと現代病理
はじめに少し触れた通り、「カリギュラ効果」を名に冠する本作は登場人物達が抱え、そしてひた隠しにする等身大の苦悩を暴く過程が描かれる。
ここで描かれる秘密とは今を生きる人々特有の超現代的な悩み、言わば「社会病理」だ。
社会病理は現代を生きる中で普遍的に存在する一方、社会の在り方の変化と共に形を変え、細分化され、その形を捉えるのが非常に困難なものでもある。
そんな世の中に巣食う心の病を出来うる限り拾い上げ、明文化し、「秘密を暴く」という背徳的な行為を経て作品に取り込んでいるのがこの「カリギュラ」シリーズなのだ!
そんな現代病理はメインキャラクターだけに収まらずネームドモブたち全員が抱えている。
それらは本編とは別のサブクエストやストーリーをこなす事で明らかになっていく。
クエスト自体は簡単なものが多いため、秘密の開放はそこまで苦にならないのでご安心を。
百を超えるその後悔の中には恐らく、プレイヤー自身に深く突き刺さるものも出てくることだろう。
「理想 (おまえ) に、現実 (じごく) を見せてやる。」
というカリギュラ2のコピーはストーリー中だけでなく常にプレイヤーに突きつけられ続けるわけである。
この本作のコピーからも伺えるようにゲームの掲げたテーマはかなり殺伐としたもの。
社会病理、後悔、現実(ルビは地獄)などなど、挙がるワードの一つ一つがなんだか鬱々としていて、露悪的な作品なのだろうか……と身構える人もいるかもしれない。
が、はじめにで述べたとおり本作はむしろ優しく前向きな作品であるように筆者は感じた*3。
それらは一見ちぐはぐに見えるかもしれない。
人の秘密を暴くことをエンターテイメントにしながら優しいもくそもなくないか?と。
しかしこのゲームにおいて、人々の抱える情けない/悪辣な/どうしようもない/目を背けたくなる、そんな後悔や現代病理を暴かせるという行程は、プレイヤーにゴシップを見せる厭らしさよりもむしろ現代人に向けた悩みの共感や発露や気づきのためにあるように感じた。
軽いネタバレになるが、とあるモブキャラの中に「サ終」という後悔を持つ者がいた。
つまり熱を入れていたソシャゲのサービス終了が受け入れられず、リドゥに来てしまった人物だ。
大多数の人からはそんなことで?と笑われてしまいそうな後悔だけれど、それでも本作ではちゃんと1つの後悔として括られているのだ。
他者にはしょうもないように見える後悔を持つ人が、片やどうにもならない深刻な後悔を抱える人も数多存在するリドゥというフィールドに同じように存在することに、筆者はなんとなく救いを感じた。
このゲームは抱える悩みの相対的大小ではなく、苦しみを抱える事それ自体に比重を置いているのだ。
そしてどんな悩みを抱える人にとっても、似た悩みを持つ人がいることや、大小様々な悩みがあることを知ること、またはそんな悩みがあることを知っている人がいるのだと感じられることは、何かしら救いになるものだと思う。
悩むことが許される場、多くの悩みを知る場、共感する場としてこのゲームはあるんじゃないかなあと。
しかしこういった他者への共感を促す優しげな行為が行き過ぎると忌避感を覚える人もいると思う。
説教や道徳の押し付けは往々にして嫌われてしまうものだ。
本作はそれを「秘密を暴く」という背徳的な行程を経ることで緩和させ、無意識の気づきの場にしているのかなあとぼんやり思ったのだった。
まあそれはそれとして、敵も見方も各所で激情そのままにカチキレて怒鳴ったり相手の事情も考えず傷を煽りに煽りまくったりもするので、そういうプロレス的エンターテインメント性もゼロではない。
筆者も作中のそういうハートフルと真逆の煽り合いを楽しんでいたことをここに白状する……
キャラクターとの交流
どんな後悔も拾い上げる器の広い本作ではあるが、大部分として物語になる後悔とはにっちもさっちもいかない重苦しいものばかりだ。
そして当然ながら主要登場人物たちの後悔はそちらの類がほとんどである。
そんな彼らのままならない現実を交流を通して暴いていくのが本作の「キャラクターストーリー」である。
帰宅部メンバーと主人公は戦闘を通じて親密度が上がり、ストーリー進行度と親密度によって個々の話が解放されていく。
そこで本編では明かされない、彼らのひた隠しにする個人的事情や内面を深堀りしていくことになる。
ちなみにこれらは開放せずとも本編クリアに支障はない。知るかどうかはあくまでプレイヤーの自由意志というスタンスだ。
キャラストでは時折「そこまで突っ込む!?」と言いたくなるくらいズバッとモノを言わなければならない選択肢が出てきたりする。
彼らの後悔に寄り添うだけ、共感するだけでは拒絶されたり良い方向に進まないこともある。
また、重要な局面で選択を誤ってしまえばそれ以上踏み込むことを拒絶されることとなるため、自分の発言には相応の責任が伴う。ウ~ン現実的。
社会的営みの中で他人の事情を詮索することなぞ滅多にないだろう大多数の人間にとってかなり胃の痛くなるキャラストであるが、いろいろと考えさせられるのも確かだと思う。
隠してきた苦悩を覚悟を決めて打ち明けた当人にとって、中途半端な共感や慰めは時として不理解よりもつらいものだと思う。それが親しい相手ならば尚更だ。
誰でも言える耳触りの良い言葉は、言い換えれば思考停止ですらある。それを聞いて解決する悩みなら端から抱えるはずもないのだし。
でも、解決策のない問題で疲弊した心がただひたすら優しい慰めの言葉で癒され救われることだってあるのも確かだし。
コミュニケーションのとり方に正解はないことを改めて考えさせられた。
そんなこんなで緊張感のある交流を経て帰宅部の皆を深く知るのは主人公ことプレイヤーの特権だ!
是非張り切って仲間たちの後悔を暴いていこう。
そしてこの作品は「優しく前向き」なお話ではあるが、ストーリーに万事解決!ハッピーエンド!は無いところが肝。
気の持ちようを変える以外の解決策が無いようなままならない後悔にどうやって、あるいはどのような折り合いをつけるのか。あらすじでも書いたことだが、これがストーリーとしての一つの命題だったと思う。
物語作品を作る以上、ストーリーにご都合やデウスエクスマキナは必須である。
しかし現代社会の問題を取り上げる中で、彼等の後悔とその解決に対するリアリティラインはできうる限り踏み越えないようにかなり慎重に話が作られていた。
そういう真摯さも本作のいいところだと思う。
そして物語特有のカタルシスをしっかり織り込みながら、気の持ち様で清々しくも重苦しくも見えてくるよう作られたストーリーと背景設定の絶妙さには感心しきりだった。
また、キャラクターとの交流にはチャットツールも存在する。
相手に色んな質問を投げかけて人となりを知ることが出来るシステムだ。
相手にとってはわりと地雷みたいな質問もある気はするが、こちらは何を聞いても関係性に支障は生じないので安心して質問しまくろう!
ちなみにこれは帰宅部だけでなく知り合ったネームドモブ全員に送ることができる。すごい。
オブリガードの楽士と楽曲
話は変わって楽曲について!
ゲームには帰宅部と敵対する8人の「オブリガードの楽士」が登場する。
彼らはリドゥの実態を知りながら歌姫リグレットに楽曲を提供し、人々の支持を集める助力をするリドゥの中心人物である。
帰宅部たちはその楽士たちを倒すことで信仰によって成り立つリドゥの均衡を破り、現実世界への帰還を実現させようとするわけだ。
そんなわけで本編は基本的に楽士たちを各個撃破しながら話が進んでいく。
楽士たちの楽曲は各章のそれぞれのダンジョン的な場所にてフィールドBGMとして流れてくる。
次の敵はどんな曲だろう!?というワクワク感もあって楽しかった。
音楽に疎い筆者では上手いことが言えず歯がゆいが、とにかくどれも本当に良い曲だった。
個性豊かで素敵な曲でありつつ、キャラクターの後悔や設定を深いところまで盛り込むのは流石プロだなあと。
そして各曲に込められた感情を高いクオリティで表現するリグレットの歌唱力も圧巻だった。
リドゥに君臨する創造主としての説得力が歌声から溢れていた。声優さんってすごい(こなみかん)。
個人的にはパンドラの「オルターガーデン」が好き。
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ピアノ(?)の伴奏が好みなのもあるが、歌詞から受ける印象が真意を知る前と後でガラリと変わるので愉快。
そういう意味では「ミス・コンダクタ」も相当クオリティが高かった。
それと楽士曲ではないが街中で流れる本作のメインテーマ・「SINGI」がいっちゃん好き。こちらは冒頭に置いたトレーラーで流れている曲。
リグレットの綺麗な声と綺麗なメロディライン、そこはかとなく退廃的な歌詞のアンマッチがたまらない。
リドゥにぴったりすぎる。
そして対する我らが帰宅部のバーチャドール・キィ。
キィは倒した楽士の曲を習得し、話が進む毎に歌える曲が増えていく。そしてそれらをバトル中にスキルとして使えるようになるのだ。
ゲージを溜めるとフィールドに流れるリグレットの歌を自分の歌声で上書き出来るようになる、「フロアージャック」という技だ。
フロアジャックの名の通り、リグレットの歌から一転し全ての曲を明るくパワー溢れるものに塗り替えるキィの歌声が最高だった。
敵陣のアウェイな空気をこちらに持ってくる説得力といったらすごい。
シリアスな歌でも頓珍漢なパフォーマンスが入ってたり聴き手を楽しませる工夫(?)満載で、ズレてはいるけど流石天性のバーチャルアイドルだなあとしみじみ。
キィの歌からは「人間の気持ちわかんね!でも歌うの楽しい!」→「徐々に気持ちも掴めてきた!」という歌い方の変化が一曲の中でもありありと伝わってくるので聴いていて面白かった。
キィの声と感情を演じながら難度の高い曲を歌い上げる声優さんには恐れ入る……
キィver.だと「永遠の銀」、「Q愛セニョリータ」が特に好き。
そんなわけで、歌の感情に寄り添って歌い分けるリグレットと全てを自分の歌にしてしまうキィ、という二人の歌姫の歌の聴き比べも本作の楽しい部分だった。
バトルシステムについて
基本は先述の通りコマンドバトルシステムになっている。
反射神経やプレイングスキルなどは必要ないため、アクションが苦手な方でもお手軽に楽しめる。
そしてその様相は従来のコマンドバトルシステムとも少し違っている。
このゲームでは各キャラ毎に行動のタイムテーブルが存在している。
プレイヤーはタイムテーブルの中で行動内容と行動するタイミングを決めることになる。
フィールド全体の動きを見て、好きなタイミングに行動を差し込んでいくのだ。
やってることは動画編集とか楽曲編集に近いかもしれない。
説明を読んでもなんのこっちゃとしか思えないだろうけど、コレが本当に楽しいんです。
タイミングや行動がハマれば攻撃のモーションで敵の攻撃が回避できたり、カウンターで相手の行動キャンセルが出来たり、打ち上げ花火のごとく敵をぶん投げまくってコンボをキメられたり……
上手く行動キャンセルやカウンターを出し続ければこちらが一方的に殴り続けることも可能なので、レベル差が大きく開いた強敵も立ち回り次第で攻略可能。
一度選択した行動はキャンセルできないため一撃で敵に形勢が傾いたり常に緊張感もありつつ、うまくハマった時の爽快感もあり。
感覚としては立体的なパズルゲームやSRPGに近い気がする。感覚としては。
め、めんどくさそう……と思う方には難易度選択と戦闘のオート設定も搭載されてるのでご安心を。
キャラごとに性格の反映された武器と戦闘スタイルがあるため差別化もしっかりされていて、プレイヤーが思い思いのパーティを組める良いバランスをしていた。
8キャラもいるけれどどんな組み合わせでも面白いコンボを考えられるので見事なバランス調整だったと思う。素人の感想だけど。
それと、2周目から登場する敵のレベルを+100まで好きに上げられる機能がめちゃくちゃありがたかった。
強くてニューゲームとお好みの難易度調整を両立できるのは非常に嬉しい。
そんな楽しいバトルシステムだが、しかし行動選択時の行動予測が等速で再生されるため、高難易度でしっかり攻略しようとするとかなりの時間を食うこととなる。
倍速が欲しかった。倍速が欲しい。倍速……
と、最後にちょっと余計なことを話したが、難易度と爽快感がかなりいい感じで個人的には最高!なバトルシステムだった。
ぜひ遊んでみてほしい。
帰宅部キャラクター所感
楽士も拾ってたらアホほど長くなるので泣く泣く省きます!わたしは山本が好きです!!
リドゥで現実の存在に気づき、懊悩しながら現実への帰宅を目指して集った帰宅部たち。
彼らは後悔を思い出したことを切欠に、キィの力で「カタルシスエフェクト」という戦う姿を手に入れる。
手脚が黒く染まり、胸からは砕けた硝子の破片と花が突き出している。痛々しく攻撃的なその見た目は当人の心が反映されており、その後悔の片鱗が伺える。
帰宅部たちはその心の内を体現した異様ともいえる姿についてお互いにほとんど言及しない。
暗黙の了解というやつだ。
その距離感は「自分が辛い思いをしたのと同じように皆も辛い思いをしているのだろう」という気遣いが根本なので、彼らはその善良さで割を食ってきた人たちなんだろうな〜となんだかしみじみした。
親しくなろうとも深入りはしない・許さない。大人な付き合いをする帰宅部たちがリドゥでどんな過程を歩み、どんな結論に達するのかは是非プレイしてみていただきたい。
そんなこんなで以下各キャラクター所感。
ちなみに胸の花については無学な筆者が必死に調べて特定したものです。間違いもあるかもしれないので話半分に受け取って欲しい。
また、それらの花言葉についてもピックアップするとあわやネタバレ一直線なので省きます。
- 部長 (主人公)
胸の花はリンゴ、武器は2丁のナイフ。
その他、男性はツバキ(赤)、女性はハイビスカス(白)モチーフのものを身に着けている。
巻き込まれ型主人公こと2代目帰宅部部長。
特別な理由や能力でなく、現実を偶然思い出して偶然そこに居合わせた、という理由で物語の渦中に躍り出ることとなった名誉一般人。
カリギュラ2で描きたいのは英雄ではないどこにでもいる誰かというテーマの体現なのかなあと思う。
まあ後々パーフェクトコミュニケーション無双するけど……
- キィ
主人公の身体を半分乗っ取った天真爛漫なバーチャドール。大好き。かわいい。 大好き。
AI故に人間の感情という不合理の塊への共感性が低かった彼女が、メンバーたちの苦悩に向き合って理解しようと変化していくさまは我が子の成長を見ているような心地だった。人はそれを愛と呼ぶんだ……
序盤の無垢ゆえの邪悪ムーブも結構好き。
また、キィには象徴する花が無い。心の貌があるのは人間だけということなのだろうけどちょっと寂しい。
- 能登 吟
胸の花は薔薇(青)、武器はボウガン。
1番最初の仲間にして頼れる相棒ポジション。
小器用で多趣味、気配り上手で社交的だが心の壁が分厚い、まさにTHE・現代人的キャラ。
相棒ポジションに据えるには抱えるものがあまりにもヘビーだが、だからこそ「カリギュラ2」の象徴のようなキャラクターだった。
この人はネタバレせずに語るのが難しすぎる。ちょっと面倒くさい性格が生々しくて好き。
- 編木 ささら
胸の花はカンナ(赤)、武器は薙刀。
すべてを包み込んでくれる博愛おねえさん。
おっとりしててすっとぼけてて非常にかわいい。
ささらさんの安定感や寛容さや皆を現実に帰すという絶対の指針は、重い話が続くストーリーの中でプレイヤーの清涼剤として機能していたと思う。帰宅部の精神面エース。
話が掘り下げられるほど好きになる素敵なキャラ。キャラストも1番好き。
- 宮迫 切子
胸の花はサクラソウ、武器は日本刀。
何者にも引かず媚びず我を通す一匹狼サムライガール。
話し方がとにかく自然な若者そのもので、ローテンションな語り口なのに感情が伝わってくる声優さんの表現力がすごかった。ツンツンしてて怖いかわいい好き。デレの威力が最強。
抱える事情はなかなか難しいものだった。まさに現代的な問題で、対となる楽士と合わせて刺さる人は多いのかもしれない。
- 釣巻 鐘太
胸の花はヒイラギ(セイヨウヒイラギ?)、武器は刺叉。
規則を重んじるカタブツ風紀委員。その一方で、自分で何かを選択することが出来ない困った先輩。
2次元キャラクターならではの極端でコミカルなキャラクター性が内に抱える後悔の深刻さの裏付けになっていて、キャラ付けとして上手いなあと思った。
キャラスト、キャラスト後の取得スキル、メインストーリーで出した答え、全て感慨深いものがあってかなり好き。
- 月島 劉都
胸の花はナデシコ(白)、武器はマインゴーシュと聖杯。
冷静沈着、歯に絹着せずズバズバ話す天才少年。詰めの甘さは若さの証。
子供っぽさを隠さない子供らしくなさが面白くて良いキャラをしていた。他の帰宅部たちはいい歳の大人たち(推定)(曖昧な表現)故の落ち着いた掛け合いが多いので、こういう小生意気な子ども(推定)(曖昧な表現)がいるとメリハリがつくなあと思った。
チャットの返信は彼が一番打てば響く感じで好きだった。
- 風祭 小鳩
己の感情に素直なチャラい先輩。
序盤はなんだコイツ筆頭キャラだったが、人となりを知るごとに案外良識を持った誠実な人なのだと認識を改めることとなった。
メンタリティは割と立派な大人だと思う。それ故に抱える事情がキツすぎて胃が痛くなる。生きろ。
帰宅部は温厚で落ち着いたキャラが多いため、激情家な彼はバランサーとしてなくてはならないキャラだった。
- 駒村 二胡
胸の花はニリンソウ、武器は巨大なチャクラム。そして最強バッファー。
いつもニコニコハイテンションなかわいい後輩ちゃん。こんな世界でハイテンションムードメーカーを担う時点で抱えている闇の深さは察せるだろう。
キャラストの緊張感は間違いなく吟とニコちゃんのツートップ。
彼女のキャラスト中のプレイヤーキャラの異常な察しの良さと無神経さが怖くて面白かった。プレイヤーはキィと共に「何考えてんだお前……?」と困惑すること必至。
あとニコちゃんは某楽士とのカチキレ大舌戦が最高に好き。
- 天吹 茉莉絵
真面目で優しく公正な生徒会長にして学園のマドンナ。そして他の帰宅部の面々とは明らかに何かが違うキーマン的存在。
前作に同一人物と思しき存在がいたのだが、苗字が違うし性格も違うし立ち位置も違う。一体全体どういうわけだ……?と、前作プレイヤーにとっては存在自体が疑わしいキャラである。
前作未プレイ者から見ても彼女はあまりに完璧な優等生なので胡散臭く感じさせようと言う意図がありありと伝わってきた。
疑いたくないのに疑ってしまう罪悪感とジワジワとした緊張感を味わっていこう!
それはそれとしてお化け屋敷を怖がるマリマリ超かわいい。愛してる。
これくらいはネタバレにならないと思うけど以下注意。
ゲームクリアした後日、彼女の抱える問題に関連した喜ばしいニュースを現実で見かけ、なんだか非常に感慨深かった。わたしは二次元と現実のリンクではしゃぐ駄目なオタクです。そんなこんなでマリマリは個人的にめちゃくちゃ思い入れが深い特別なキャラ。
以上の心強い(?)仲間となる帰宅部たちは、ストーリーや個別のキャラクエスト、ダンジョン攻略中のフィールドトーク、拠点での座り方や置かれた私物、個別のチャット、あるいは戦闘スタイルといったところから多面的にそのキャラクターが掘り下げられていくことになる。
ストーリーだけでは取りこぼしてしまいそうな彼らの関係性や小さな人間性をしっかり作り込み、ゲームに落とし込んでいくその丁寧さがよかった。
だからこそこちらもゲームを楽しめたし、彼らの苦悩を暴いては頭を抱える羽目になれたので……
丁寧に大事に作られているものって受け手としてもなんだか嬉しい気持ちになる。
「カリギュラ2」、本当にいいゲームでした。
おわりに
ネタバレを控えた割にかなりの長文の感想になってしまいました。
ここまで目を通して頂いた方は本当にありがとうございます。
うまくまとめきれていないものの、ひとまずカリギュラ2の良さについては多少なり語る事が出来て筆者は満足した。
もしこの記事でゲームに興味を持っていただければ幸いですし、この記事を通してプレイした方と感想を共有できたら死ぬほど嬉しいです。
しかし正直言うとまだまだ語りたいというか、主にシナリオと登場キャラクターたちについてネタバレありで書きたいことが山ほどあります。
また少し時間を置いて、うまくまとめられそうであればネタバレ込みの感想文も投稿しようといます。
その時はまた。
去年(2021年)は個人的に楽しいゲームに沢山出会えた年だったのですが、その中でもカリギュラ2にリアルタイムで出会いプレイできたことは僥倖だったなとしみじみ思います。
現実世界の出来事と妙にリンクするニュースを見かけたり、なかなか経験できないような立体的なゲーム体験がきました。
やってよかった「カリギュラ2」!というわけで。
改めまして、ここまで目を通してくださった方はお付き合いいただき本当にありがとうございました。
また何かの雑記やら感想文やらを投稿しようと思いますのでご縁があればよろしくお願いいたします。
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