茶箪笥のモリタート

考察は妄言 深読みは趣味

ポケモンSVのプレイ感想:ザ・ホームウェイ

はい。





前編に引き続きポケモンSV感想です。
後編ではザ・ホームウェイ全体のお話と、最後にいつものキャラクター所感があります。

再三の注意喚起ですがネタバレをドシドシしていきますのでご注意ください。


前編はこっち↓
3monopera.hatenablog.com


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ザ・ホームウェイ

本編の3つのストーリーを最後まで進めると始まる新たな物語にして、主人公の冒険のエピローグでもあるザ・ホームウェイ。
SVの何が最高って、とにもかくにもこの話。
お話も演出も本当に最高だった。

冒険の決着


学園で立ち入りを禁止された、パルデアの中心部に位置する未知の領域・パルデアの大穴
その大穴ことエリアゼロの最深部で研究を続ける博士に届け物を依頼され、ミライドンと主人公・ペパー・ネモ・ボタンによる秘密の大冒険が始まる。

それまで個々に進められていた本編の3つの宝探しが最終的に4人の冒険に帰結するという話型は物語のお約束だとは思うけれど、やっぱり良いものは良い。


数日にも満たない子どもたちによる大人には内緒の大冒険。
知らない場所に集まった「友人の友人」たちの距離が徐々に縮まっていく、ぎこちなくてちょっと浮足立つような空気がたまらない。
筆者は青少年の交友関係が広がるときのあの独特なフワフワ感が大好きなのだ……

そして奥に進むにつれ漂ってくる、ポケモンらしからぬ生と死の匂い、緊張感、家庭環境の告白などなどが物語のスパイスとして効いていて……すごい、すごかった……
クライマックスに近づくにつれ展開は加速し、怒涛の展開が過ぎ去ったあとに残されたしんみりした空気感も良かった。


おそらく多くの人が想起する通り、この子どもたち4人(と1匹)による短い大冒険は映画スタンド・バイ・ミーリスペクトなのだろう。
ある意味ポケモンの原点回帰とも言えそう。

エンディングクレジット前の空にフェードアウトしていくムービーシーン、スタンド・バイ・ミーのあの同名曲が流れそうな空気感にドキドキした。
歌付きのエンディングだったので近からず遠からずだった。


ラストバトル

そんなエンディングから少し立ち戻ってラストバトルの話。


主人公と最強のAIによるタイムマシン攻防戦の決着が着いたかと思いきや、博士の組んだシステムによって更にAIが暴走し、ライドンのトラウマでもある楽園の守護竜が主人公たちの前に立ちはだかる。
戦おうにも自分たちのモンスターボールはシステムによってロックされ、なにも手出しが出来ない。

ラストバトルはそんな絶望的な演出で始まり、そこからはコマンドを選択するその一つ一つに意味があり盛り上がりがあり、プレイ時の筆者は楽しすぎてちょっと指が震えていた。
言い方は悪いけどやることがだいたいパターン化する単調なコマンドバトルをここまで激アツなクライマックスに持っていくなんてすげえや!!!!!


前編で述べた「本作だからこそ出来たストーリー演出」とはまさにこのことである。
オープンワールドでずっと行動を共にしていたライドンへの思い入れにしても、手持ちポケモンの表示形式にしても、テラスタルというシステムにしても、全てがこのための布石になっていたのが何より素晴らしかった。

ストーリー外縁部

そして今までとは毛色の違うシリアスなストーリーを盛り立てる演出部分も非常に良かった。

とりわけエリアゼロの神秘的なフィールドやその音楽には圧倒された。
光が降り注ぐフィールドと荘厳なBGM、渦巻くように地下へ降りていく異様なマップ設計がワクワク感と不穏さを高めてくれて……最高だぜ……
全体の色調がビビッド?に変化したのも「違う世界へ来てしまった」感があってよかった。


更に、ザ・ホームウェイでは道中が4人行動になったり、移動中に会話がシームレスに展開されるようになったのも特筆すべき点だろう。
これによって4人の冒険であることが可視化され、物語への没入感や緊張感が維持できていた。

RPGの宿命ではあるが、話がある都度立ち止まって操作不能になるとどうしたって物語への没入感も薄れてしまうものだ。かといってそれを最小限にするとなかなか物語や登場人物を掘り下げることが出来なくなる。

ホームウェイでは一部の会話が移動中に展開されることで、物語の緊張感や没入感を維持したまま4人のぎこちなく絆を深めていく行程や本編で明かされなかったパーソナルな情報等がが丁寧に掘り下げられていて、非常に効果的な演出になっていたと感じた。
とてもよかった。

何よりポケモンでこういった最近(?)のRPG(?)みたいな演出が見られるとは思っていなかったので尚更新鮮に感じたところもある。

「博士」の立ち位置


ラストバトル後の、旅立つ側であるAI博士の別れの言葉が「ボン ボヤージュ!(よい旅を!)」だったのがなんだかとても味わい深くて好きだった。

未来ある子どもたちへ向けたシンプルなエールだともとれるし、エリアゼロでしか稼働できない機械が「過去/未来へ旅立つ」ことの真意をペパーに隠すためのオブラートに包んだ別れの言葉ともとれるし、自分の願いに向かって旅立つ高揚感もあるだろうし、何よりポケモンにおける「博士」という立ち位置のことを非常に意識している言葉のように感じた。


というのも、これまでの作品において主人公の旅立ちはいつでも博士から始まっていたからだ*1

しかし本作の博士は違う。
博士からはミライドンの面倒を見て欲しいという画面越しの依頼こそあったが、主人公の旅の動機はそれとは別の課外授業「宝探し」にあった。

SVでは、従来の旅を促し図鑑を授ける博士のポジションを学校および「先生」にスライドし、強大なポケモンを使った秘密の計画を行う大人(所謂ラスボス)の役割を「博士」側に隠していた。


筆者はエリアゼロでの真相を知ってから博士の別れの言葉を目にする直前まで「博士という呼び名はミスリードだった」のだと解釈していた。
実際「博士」と「ラスボス」ポジションのスライドは事実ではあると思う。

しかし一方で、最後の「ボン ボヤージュ!」という旅に関係する発言により、やっぱり彼もポケモンの「博士」だったんだな……という理解に着地した。
主人公たちの旅立ちの場面には博士がいるのがポケモンだよなぁ、と。


3つの物語は学校(校長)にもたらされたもので、エリアゼロの冒険は博士にもたらされたもので。

ポケモン研究所のような設備だった校長室が実は博士の学生時代の研究室だったことも後に発覚したし、制作陣の意図としても「博士」ポジションは表の校長/裏の博士みたいな感じで設計したのだろう。

そんなこんなで、「ボン ボヤージュ!」によってなんだか視界がクリアになった心地だった。

帰る場所について

ザ・ホームウェイ(帰り道)というタイトルがミライドンの帰郷とラストの主人公たちの帰路ダブルミーニングだということはプレイすれば察するところである。

そして、ラストバトル後の主人公の「帰ろう」という言葉が指す場所は、おそらく友人たちと共に過ごす学校だった。
主人公にとってのホームは、この冒険を通して実家から仲間たちのいる学校へ変化していたのだ。


このことはエンディングクレジット後の再スタート場所からも伺える。

従来のシリーズにおいて、主人公の家は始まりの場所であり帰ってくる場所でもあった。
これまでの主人公が殿堂入り(エンディングクレジット)後に冒険を再スタートさせる場所は常に家の自分の部屋だったのに対して、SVの主人公の再スタート地点は学校の寮にある自分の部屋であり、プレイヤーが意図しなければゲームのはじまり以外で実家の部屋に向かうことは一度もないのだ。


これって案外大きな変化だと筆者は思っている。
もとより親元から離れて冒険するのがポケモンシリーズであるけれど、それがテーマとしてより顕著になっているような。
子どもたちによるコミュニティの確立については前編でも語った通りだが、そう感じた根拠の最たるものはこの再スタート地点だった。


子どもだっていつかは大人の庇護下から抜け出すわけで。
それに、世の中は優しい大人も立派な大人もちゃんといるけれど、それでも世界の全てが子どもに優しくは出来ていない。それぞれの大人の事情が交差して、折り合いのつかない部分の皺寄せは時として子どもに振りかかってくる。
スター団のいじめ問題だったり、ペパーのネグレクト被害だったり、ネモの並び立つ相手のいない孤独もそれにあたるかもしれない。


そんな子どもたちが独り立ちして社会性を獲得する過程や、彼らにしか出来ない世界への立ち向かい方が見られたのが本作だったんじゃなかろうか。
それを象徴するのが主人公の帰る場所の変化だった*2


家だけが世界のすべてじゃないぜ!
というメッセージだと受けとるとドライかもしれないが、作中で親を亡くしたペパーの割り切り力(ぢから)も帰る場所を新たに見つけたからだと考えればけっこう納得できる気がする。


その他与太話

余談だが、本編の3つとホームウェイ、それぞれタイトルに「道」がついているなあとあとから気づいた。

  • チャンピオンロード
  • スターダストストリート
  • レジェンドルート
  • ザ・ホームウェイ

冒険中にたまに目にするパルデアの格言(?)「全ての道はパルデアの大穴に通ず」って言葉にかかっていてオシャレ。


また、エンディングクレジットを終えるとゲームのスタート画面が変化するが、あのスタート画面てペパーの机だったのか……!と変な感動があった。
主人公が学校の机にブックを置くタイミングはなかったもんね。
だとしたらもしかしてあのボールもライドンを入れていたやつなのかな〜とか考えるとしみじみエモい。


そしてさらなる余談。
エリアゼロ最深部の研究所前で主人公がペパーに「ここは俺に任せて先に行け!」と言われたときは「こっちの台詞だが!!!?!?!?」という気持ちになった。
それの前にもペパーが所持していたブックを主人公に預けたりなんだり、博士に召喚されたのは主人公だったことを忘れないペパーの聞き分けのよさにネグレクトによる傷の深刻さなどを感じたのだった。
あそこは普通お前が先に行くべき場所だぞペパー。


(2023.10.10追記)
「あそこはペパーが先に行くべき」と書いたが、よくよく振り返ってみるとペパーが過去のトラウマをおしても再度エリアゼロにやってきたのは「親に会うため」ではなく、あくまで「主人公を自分と同じ目に合わせないため」の付き添いとしてだった。
彼にとって「ザ・ホームウェイ」は主人公の受けた依頼を完遂させることが第一の目標だったのだ。
そう考えると聞き分けの良さとか関係なく、ペパーは本当にただ純粋に「先に行け!」と主人公に言っていたのかもしれない。
とはいえ、ペパーの親に対する希望のなさとか自己肯定感の低さとかが言葉の随所に出ているのはマジ。
(追記終わり)


キャラクター所感

  • ミライドン/コライドン

主人公の大事な旅の仲間。

今作の伝説枠のポケモンなのだけれど、「実は現代にいる普通のポケモンの過去/未来の姿でした〜!」は良い意味で肩透かしを食らった。
しかも種族としてはめちゃくちゃ強いけど同種のもう1匹(せいかく:ひかえめ)にいじめられて戦うのがトラウマになるくらい大人しい子(せいかく:きまぐれ)だったという二段構え。

そこからのクライマックスバトルの高揚感は先にも述べた通り。
この再起が成功体験等のきっかけによってではなく、ただただ「後ろに仲間がいるから」という事象によるものなのがイイよね……
ボールから出てきてまず後ろにいる主人公たちの方をチラと見て口を引き結び、対峙するトラウマの相手に向き直ってバトルフォルムに変形するムービーシーンが好きすぎて何回も見てしまう。

そして仲間の応援でトラウマを乗り越え、バトルフォルムにも自由に変身出来るようになった相棒ライドンなのだが、それでもやっぱり暴れん坊ライドンは苦手らしい。
ストーリー後、エリアゼロ研究所を見下ろす場所に1人佇む暴れん坊ライドンをゲットすると相棒ライドンはボールの中で悲鳴をあげるのだった。
可哀想だけどかわいいし変にこだわった演出で面白かった。
それにしてもライドンの快適な運用には2体必要な仕様にした制作者は割と鬼だと思う。

話は立ち戻り。
オープニングで滑空するライドンが博士やペパーと過ごした思い出の灯台を目指していたことに後から気づいたわたしはそのいじらしさに奇声を発した。
研究所に入って落ち着きたかったのかペパーに助けを求めようとしたのかはわからないけれど、ただひたすらにかわいすぎる……

ペパーはペパーでライドンを忌わしく思いつつも常に空のボールを持っていたようだし、この2人(1人と1匹)の関係性がめっちゃエモくて少しくやしい。
その他諸々の事情を考慮してライドンはペパーのもとにいるべきでは?と理性のわたしが囁くのだが、今更この子を手放せるわけねえだろ!!!!!!!と本能が叫んでいる。

そもそも公式で主人公のポケモンになっているのだからこんな理性と本能の戦いなど無意味。
ずっと一緒にいような……ミライドン……


  • 主人公

今作は特に表情や動きが豊かで、見ているだけでも楽しかった。
それぞれのイベントをこなしたあとの記念写真に写る主人公、本当に楽しそうでかわいい。好みの顔の美少女にカスタマイズできたので尚更。

これだけ表情豊かになって「はい/いいえ」以外の選択肢もあるので、だいぶキャラクターとして独立した存在になってきたように思う。

そして、周りから託されるヘビーな依頼を全てこなしていくマルチタスクの天才な主人公が、協力者ポジションだからといって影が薄くならなかったのはこの表情による影響も大きいのかな〜と感じた。
主人公が出来事に対してボディランゲージや表情といった何かしらのリアクションをすることで、当事者としてちゃんとものを考えその場に存在しているのだとプレイヤーの目にもはっきりとわかったので。


話は変わるがジム再挑戦時のハイダイさんによる主人公への言葉がすごい好き。
良くも悪くも周囲を巻き込み多大な影響をもたらす激流と主人公を評し、その激流に食らいついてくれる周りの奴らを大切にしろよ!という激励である。

強さへの求道、仲間との絆、ポケモンとの絆に奔走した主人公にまさしくぴったりの言葉だった。


  • ネモ

ようやく肩を並べられる友人が出来たことに大はしゃぎするラストバトル後のネモが可愛くて本当に大好き。
あの「やったー!」は恋に落ちちゃうよ……ズルいぜ……


ただのバトル狂いに見せかけて、体力がなかったりボール投げるのが苦手だったりお嬢様だったり、そしてバトルにおける孤独を抱えていたり、話を進めるごとに魅力が増すギャップの塊だった。かわいい。

溌剌とした性格だから表には見えにくいけど、ライバルの不在は結構深刻な問題だったと思う。
大好きなバトルにも関わらず相手のために手を抜くようになったり、負けの悔しさをまだ理解できないほど真剣勝負に飢えていたわけだし。
主人公が強くて本当に良かったねえ。


ザ・ホームウェイではバトル狂としてもムードメーカーとしても縁の下の活躍を見せた。
過剰に重たい空気にしないように明るく振る舞える気遣いと天然さのバランスが頼もしく、どこまでもシリアスに転がり落ちてしまいそうな設定と空気感の中、「ポケットモンスター」として踏み留まれたのは不謹慎サイコバトル狂ネモの働きが大きいと思う。
静まり返った帰り道に買い食いしよ!と提案してくれる友人の有り難さを皆で一緒に噛みしめよう。


  • ボタン

ボタちゃんのパパ、もしかして剣盾のピオニーサン……?
言及される要素は完全にピオニーなんだけど見た目がシャクちゃんにもピオニーサンにもトレーナーカードに映る暫定奥さんにも似てないから確信がもてずにいる。
まあガラル出身だしそうなんだろうけども。


ボタンは見た目と天才ハッカーという設定がかなり奇抜だけれど、キャラクター造形は妙にリアルだった。

蓋を開ければめちゃくちゃ優しい子である一方で、コミュニケーション事故の起こりやすそうな性格と口下手さが随所に出ていたり、いじめ問題で親にも頼れず(頼らず)結果的に留年という遠回りをすることになったところなんかも、妙〜〜〜な生々しさを感じた。


こういうちょっとヤな感じの生々しさを持つキャラクターは賛否両論になりがちだが、それによってスター団との紆余曲折が生まれたりペパーとの衝突が起きたりと物語の起伏のために間違いなく必要な存在だし、味わい深くて個人的には非常に好き。

主人公・ネモ・ペパーという根明人間の集いではたぶん察せられなかったライドンの翳りに気づけたり、AI博士が旅立った後のペパーに拙くも励ましの声をかけたり、スター団のボス達が学校に馴染めるかをあくまで陰で見守ったり……と、他者の心情にちゃんと寄り添おうと出来るボタンは立派だぜ。


  • ペパー

まず初めに、ペパーの気の毒な過去の境遇とストーリーで進行形に展開される仕打ちに悲しくなると同時に、非常にテンションがブチ上がったことをここに懺悔します。
不幸な境遇のキャラクターに興奮するのはオタクの悪い性です。
この後のペパー青年の人生に幸多からんことを……


ペパーって明るいし元気だしネグレクト被害者のわりに社会性?社交性?はあるように思っていたけれど、思い返すと初対面は主人公につっけんどんだしネモの話は全スルーだしエリアゼロでボタンにもつっかかってたし、「根は良いやつだけど親しくなるまではちょっと……」という評価が適切かもしれない。
そもそもベクトルは違えど主人公の友人3人全員そうだわ。

逆になんで主人公に対してはすぐ好意的になったかを考えたときに思い当たったのは、主人公は常に聞き手のポジションにいたという点だ。
子供にとって一番最初の自己表現の相手、つまり聞き役は親であり、それがペパーには欠けていたものだった。

制作陣の意図的なものかどうかはわからないけれど、自主的に言葉を発さない、コミュニケーションの一投目は常に相手からとなる「主人公」というキャラクターのスタンスがうまいことペパーと噛み合っていたのかなあと思った。
自分からキャッチボールの一投目を投げ、受け止めてくれる相手がペパーに必要なものだったんじゃないかな。
コミュニケーションを取ろうとしてくれたネモのことをウザいと言ってたくらいだからな……

そんな彼が主人公に心を開き、衝突しながらもネモやボタンやライドンとも絆を深め、彼自身の世界を広げていった過程を思うと感慨深い。


(以下追記)
再プレイして気づいたのですが、ネモあるいはボタンに対してペパーが態度を硬化させたのは「博士の息子」という扱いをされた後だった。
ペパーが学校にあんまり行かないし他者との交友関係が見えないのも、学園中で「息子」であることが有名だからだと考えると色々スッキリする。

上で筆者が主人公との交流に関して深読みしていたけれど、原理はもっとシンプルでした。お恥ずかしい限り……
まあでもどちらにせよ主人公に対して態度を軟化させたのは余計なこと言わなかったからなのは間違いなさそう。
(追記以上)


余談だが彼の部屋に飾られたオラチフ(現マフィティフ)の写真がちょっと怖かった。
構図的にエリアゼロの研究所にある写真(ペパー少年とオラチフ)と同じもの(の複製)と思われるのだが、その場合自分が写った部分を切り取ってオラチフ単品の写真として部屋に飾ってることになるんだよね……
博士のことは吹っ切れても幼少期からの人格形成的な問題はまだまだ根深いのかもしれない。
そもそもこれはただのオタク特有の深読みかもしれない。忘れてください。


  • クラベル校長

おもしれー校長……

終始礼儀正しく心優しく、少しズレたノリの良さとコミカルさを持ち、全力で子どもたちと向き合う理想的な教育者だった。
就任前の不祥事についての不十分な引き継ぎを言い訳にせず自ら問題解決に奔走する出来た人間っぷりに脱帽。
子どもたちに誠実に謝罪できる大人は格好いい。

あと校長戦のBGMがめちゃくちゃ好きです。
サントラ出してくれねえかな……


  • 博士

とうとう博士が黒幕なシリーズが登場したのがなんだか感慨深かった。黒幕というか元凶って呼び方のほうが合ってる気もするけど。
さらに言えばポケモンで本気(マジ)のネグレクトする大人が出てくるとは思わなかったし、主要登場人物にして死者、というのも初じゃなかろうか。


主人公が冒険を始める段階で既に死者だったため伝聞や日誌で推し量るしかないけれど、博士自体は完全な悪人でも善人でもなく、常人の理解の及ばない狂人でもなく、才能に対してメンタルが追いつかないアンバランスな人のように感じた。
まあやってることは欲求にストッパーをかけられなくなったただのマッドサイエンティストだけどさ……


過去/未来のポケモンでパルデアを埋め尽くしたいという野望を「生態系が壊れるからやめとけ」と真っ当な意見でAI博士(自分自身の理性的存在)から諌められてるのに「壊れるならそれもまた自然の姿」とかいう素人目にもわかる詭弁で自己合理化してるのがとりわけ印象的だった。
マッドな思想というよりも、言い方が回りくどいだけで要は子どもの駄々にしか見えないのだ。
各観測基地にある研究日誌?を読むにいっぱいいっぱいになってたんだなというのはわかるし。

それに研究の成功に必死とはいえ別に自分の家族に興味がないとか自分の野望以外どうでも良かったというわけでもなく、息子のペパーを愛していたというAIの証言も真実だったと思う。
なんというか、そこまで常識外れのヤバい人ではなかったはずなのだ。


けれど、博士の目には「今そこにいる自分の家族」ではなく「自分の作った楽園で幸せに暮らす家族」という完成形しか見えていなかった。
目標に目が眩んで足元の現状を見失う研究者……昔の映画で観たことあるな……*3

だからこそ校長がこぼした「目標に一直線で周りが見えなくなる」という人物像がただただその通りなのだろう。
その側面だけを切り取ればまさしくペパーのような、よくある物語で描かれるような、コミカルなキャラクター性を持った人だったのだ。
ただ、ぺパーが言うように「タイムマシンなんて大層なものを作るのに子供に構っていられるわけがない」という最悪の前提がついていたわけだが……


博士の目指したゴールにはペパーの存在があったとしても、たった今顧みるべき現在を見落としては仕様がない。
仮に博士が自分の楽園を完成させられていたとしてもペパーの失われた幼年期は報われないわけで、嬉しさより遣る瀬ない気持ちが残るのみだろう。
研究は結果が求められるけど人間関係は過程が求められるのだ。
多忙な仕事と家庭を両立出来る人間が如何ほどいるかと問われれば口を噤んでしまうが、それが庇護の必要な子供を放任する理由には全くならない。


まあとにかく、博士が根っからの悪人ではないからこそ、むしろその行いは最低最悪だったぜ!



  • AI博士

博士がタイムマシンに狂っちゃったせいで相対的に常識人みたいになった合理性と優しさの塊。

ラストバトルで無理矢理暴走させられた時の「フトゥー(オーリム)AIはこれ以上戦うつもりはない!」と一瞬表示されて塗り替えられる絶望的な演出めちゃくちゃ好きです。

こういう物語において暴走する役割はAI側であることが多い中、本作では人間の方が暴走していてAI側がタイムマシンの停止やペパーに愛情の伝達などといった尻拭いを行う役回りになっていて面白かった。

おそらく過去/未来でAIの停止は免れないだろうけれど、最後の最後だとしても自分の目で憧れの世界を見るという望みを叶えられていたらいいなと思う。


  • レホール先生

本編には出てこないが本作ナンバーワンマッド人間でした。博士の能力とレホール先生のメンタリティが合わさると悪の組織のボスが錬成されそう。
自分の知的好奇心のためにヤバいポケモンの封印解除を生徒にけしかけるな!!!!!!

まあそれでも授業の進行に不満を持ちつつ指導要領に逆らわない程度の自己抑制ができてるし仮にも教師だからスレスレ踏みとどまってる感はある。

なんでメインキャラじゃないレホール先生にいきなり言及したんだ?と思われることでしょう。
無論ビジュアルが本作中一番好みだったからです。以上です。



あとがき〜DLCについての与太話を添えて〜


前後編合わせてで約2万字に及ぶ感想文になってしまいました。
授業やバトルシステムやBGMといったストーリー以外の要素を泣く泣く削った筈なのに全然文字数が減らなくて怖かった。

ここまで読んでくださった方は本当にお付き合いありがとうございます。
貴重なお時間を割いていただき非常に……非常に恐縮です……


11月から感想文を書いていたはずなのに気づけば年を跨ぎDLCの情報が出てきて、更にはブログの最終更新日から1年が経とうとしていることにも気づき、流石にらやなきゃ……と本腰を入れて何とか書き上げた本感想文でした。


そう!DLC情報出ましたね!!!
ストーリーを通して4人と1匹が大好きになった筆者としてはこの5人組でDLCの話も展開してくれないかな〜という淡い期待を抱いていたため、DLCでメインとなりそうな新キャラクターの情報が出た時は嬉しさ半分残念半分だった。
が、よくよく考えるとこの5人の話ってホームウェイでちゃんと完結しているわけで。

新たな冒険とは確かな地盤のない場所に踏み入れた主人公が足場を固めていく行程を指すのであって、これ以上山あり谷ありな関係値にはなりそうもない彼らについては物語で描くこともないだろう、と割とすぐ納得がいったのだった。
新たな仲間の登場に素直に期待しようと思う。


ポケモンDLCは今年の秋以降なので、期待に胸を膨らませつつまた何かしら別の作品に触れられたらな~と思っています。
そして今年はもう少し記事を書きたいな……とも……

とはいえ明日には明日の風が吹く。
次の感想文がポケモンDLCになるか別の何かになるかは定かでないが、待て、次回!




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*1:剣盾だけは少し特殊だが、博士の後押しでダンデに認められてジムチャレンジに参加することになっているので、やっぱりきっかけは博士なのだと思う。

*2:そういう意味では、独立した特殊なコミュニティが形成される「学校」という舞台設定はめちゃくちゃ上手いなと思う。 今まで深く考えたことなかったけど、様々な作品において「学園モノ」が一大ジャンルとなっているのも納得。

*3:映画「フラバー」にて、発明家の主人公は婚約者の為に研究に没頭して、結果婚約者との結婚式を3回すっぽかした。それとは関係ないけど作中に幼児だった筆者の性癖を歪めたウィーボというキャラがいる。