茶箪笥のモリタート

考察は妄言 深読みは趣味

続・新機動戦記ガンダムWを観た話

はい。
後編はキャラクター所感やメカ、細かい好きなシーン語りになります。

前編はこっち↓
3monopera.hatenablog.com

以下、前編に引き続きネタバレフルスロットルなのでご注意されたし。



個性的な登場人物たちについて


ガンダムWの売りといったらまず何より5人の美少年主人公である。
美形揃いのガンダムWが当時ものすごい女性人気を獲得したらしいというのは当時を知らない私でもよくわかった。
そしてビジュアルだけでなく、登場人物全員インパクト大の個性派ぞろいというネタ的人気も高い。


つまりはキャラクターがめちゃくちゃ魅力的なのだ。
かっこいいキャラがそれぞれに個性を光らせながら一騎当千の大立ち回りをするのなんて老若男女中2病みんな好きでしょ多分。

あとは女性陣の活躍も作中かなり多い。個性派ぞろいの女たちが戦場に政治場にと大活躍である。
わたしは強い女が大好きなので、個性的かつ芯のあるW女性陣は最高だったと声高に主張したい。
最高!!!!!


そんな個性派揃いのW登場人物たち、言動が奇天烈な割にビジュアルや髪色がめちゃくちゃ普通なのである。*1
突飛な人物のわりに舞台設定やビジュアルが地に足ついてるアンバランスさ、凄くイイと思います。
こういう一見真面目なビジュアルがWのシリアスな笑いを助長してるなと思う。

そんなこんなで以下メインどころと好きなキャラについて所感を語っていく。

無口な工作員にしてシリアスな笑いの申し子。そしてセンター主人公。
主人公のわりに(だからこそ?)終盤までスタンドプレーが目立つうえ破滅願望バリバリだった。
Wはそんな彼の人間性の再生も大事なファクターだったと思う。彼自身もよくわかってない彼の心がリリーナや仲間との交流、混迷する戦いに身を置く中で徐々に回復していってよかったな……としみじみした。
EW版ではTV版のいっぱいいっぱい感が軽減され、仲間たちを頼るし会話もするし戦闘の勢いとはいえ弱音も吐露するようになっていて成長?回復?に感動した。
彼のテーマソングがかっこよくて好きなのだが、そのタイトルが端的に彼を表現していると思う。
「思春期を殺した少年の翼」
思春期は「失った」のでも「無い」のでもなく、あくまで「殺した」ものなのがやるせない。


こんなノリで書いていくと終わらないので以下はもうちょい簡潔に行きたい。

  • リリーナ

鉄砲玉みたいな行動力を持つ弾丸お嬢様。
サンクキングダム創設時はその思想にウ~ン……という気持だったがその後の彼女が無力さや思想の矛盾への葛藤に苦しみながらも足を止めない姿に手のひらを返した。綺麗事と自覚してるかどうかは大事。
己の血に翻弄されながらも逃げず、思想に敗北しても道を諦めず行動し続けたリリーナ様は美しいぜ。
その原動力はヒイロとの出会いなんだろうな~と思うとエモだなって。

  • デュオ

本作において貴重なムードメーカーにして損な役回り担当。
必要なことだったとはいえ作中で3回も味方側から本気の腹パンを受けてて申し訳ないが笑ってしまう。
ノリは軽いし感受性も普通っぽく見えるのにコロニーへの想いと戦う覚悟は完全にキマッているから案外やべーやつなんじゃないかと思う。
敵地潜入時の立ち回りや台詞回しが全体的に洋画っぽいのが好き。

  • トロワ

謎の前髪を持つハードボイルドパーフェクトマン。
工作員としての能力はもちろん他人の心身サポートもできるすごい奴だが、サーカスとか敵組織に潜入した時は「敬語使った方がいいんじゃないかな……」と思った。
前髪の愉快さと身のこなしの華麗さと発言のハードボイルドさと内面のクールさが絶妙にマッチして味わい深い奴だった。
機体も含めて男性陣で一番好きかもしれない。

  • カトル

協調性はあるがたまに電波を受信するお坊ちゃん。
コミュ力もあるし家族も(当時は)存命だったし、まともそうな少年だと思っていたが怒らせてはいけない人だった。
どうか優しい心を失わず強く生きてほしい。
ゼロを作ったり暴走したりGチーム集結に助力したりEWではガンダムを廃棄したり回収したり、功罪入り混じりつつも要所要所で作品の山場を作った立役者。

  • 五飛

戦隊もののブラックみたいな立ち位置の一騎掛け担当。
大局が見えている人っぽいのだが如何せん暴走マシン感が強い。己の信ずる正義に真っすぐ過ぎる上に故郷が自爆したのでいっぱいいっぱいになってたんだろう。
EWのヒイロとの舌戦を観てつくづく真面目なやっちゃな……と思った。
その後の彼は憑き物が落ちたようだし就職先も決まったし良かった良かった。

  • 余談:5人について

便宜上仲間と表現したけどガンダムパイロットたちですら最後まで同じチーム!というより目的が一致したから共同戦線をしくって感じだったのが面白かった。
個人プレーじゃダメですぜ!という序盤に問題提起されそうな事態が表出して解決に乗り出したのが残り数話になってからだったうえ、チームプレーはその回限りだったのは笑った。笑っていいのか?
とはいえ、それぞれ自分の命を勘定に入れずコロニーのために身をなげうって戦っていることには何とも言えない気持ちになる。
学生時代、研究の一環でベトコンの少年とかを調べてた時期があったので戦争とか少年兵については変に気持ちを入れてしまった。
EW後はそれぞれの能力を活かしつつ日常に馴染んでいけるといいね。
わたしは一体どのポジションからものを言っているんだろう。

  • マッドジジイ共

イカれた見た目のガンダム製作者たち。
TV版を見ていた時は戦争に対する良識はもっている割に少年兵を育てているその倫理観の歪みにドン引きしてたのですが、実際ヒイロ以外は別にマッドジジイたちに幼い頃から少年兵として育てられたわけでもないみたいなのでそこは誤解してゴメンねという気持ち。ドクターJ以外は。
そしてマッドな研究者たちであることは間違いない。

真面目なのにやることなすことおもしれー男。
FEにも仮面の男枠ってあるけどもしかしてガンダムオマージュなのか?
トールギス初乗り時の(キュピーン)「死ぬな!このままでは!(確信)」はWでも指折りの面白シーンだった。
乗る機体も本人もカッコイイんだけどそれより先に面白いが来る。
彼の戦艦両断攻撃はド派手で大好き。

  • トレーズ

エレガントなカリスマにして作品の混乱のもと。
わたしはEWを観るまでずっと「何でノベンタ元帥を謀殺した!?」と頭を抱えていた。
この人、エレガントで意味深な言動に惑わされそうになるけれどよく見ると五飛との決闘後あたりから戦争に対する考え方を変えているのだ。
それを見落とすと意味深なエレガントさにより混乱の渦の中へ一直線である。
なにはともあれ、非常に魅力的な敵役だった。

  • レディ・アン

どこまでも一途で苛烈な暴走特急強肩レディ。
序盤の暴走はヤバいとしか言いようがないが気持ちのいい過激さで嫌いになれないイイ悪役だった。
髪おろしたレディは最高にマブい。コロニーのメガネモブ男に名乗った時は「ドュホ!?」みたいな声が出た。わたしもマブいスケにあんな自己紹介されてえな~。
ビジュアルが好き部門No.2

  • ノイン

ゼクスに会えない日々を指折り数える恋する軍人。
初登場時の「ゼクス、私に甘えに来たまえ」というセリフとゼクスの電話中に背中合わせで鞘うちするシーンのエッチさに大興奮してた。
女性陣では一番MSでの活躍が多い。白トーラスかっけえぜ。
あとプリベンダーのブルゾンが超似合ってて超好き。ビジュアルが好き部門No.1

  • サリィ

元軍医とは思えない行動力の頼れるおねえさま。
数少ない終始ガンダムパイロットたちの味方として奔走していたキャラで、わたしは登場のたびに「好き……」と呟いていた。
後述するがヒイロに爆弾処理を依頼した時の「自慢したいのよ」から始まる一連の台詞大好き。リリーナとはまた違う意味で彼女もガンダムパイロットという存在に一目惚れしたんだろうなと思った。

  • ドロシー

宮廷道化師ポジションの不思議眉毛少女。
リリーナの理想論に対する彼女の反証が無ければわたしはあの思想を受け入れがたかったと思う。作中繰り返されたリリーナとのアウフヘーベンは大事なファクター。
発言は終始ぶっ飛んでいたが、その言葉の真意とそれを吐露した時の絶叫はしびれた。
作中一番好きなキャラ。


  • キャスリン

戦う力はなくとも強い女は強いのだと教えてくれたお姉ちゃん。
「死ぬのね(超理解)」は屈指の笑いどころ。そこからの戦場乗り込みコックピット乗り込みグーパンチは最高だった。
声も見た目も振る舞いもめっちゃ可愛いので私は彼女が登場するたびに「かわいっ……」とツイートしていた。
が、記憶喪失トロワに自分をお姉ちゃんと教え込んで庇護していた事実は正直ちょっと怖かった。

敵艦に単騎乗り込みかけた特攻マインドガール。
作品では珍しい普通のかわいい女の子だと思って穏やかに見てたら最後に敵艦単騎乗り込みかけてビビった。
そういや君も元とはいえ志願兵だったね……
EW見た感じデュオとうまく行ってるようなのでゼクスノインコンビに次ぐ勝ち組カップルって感じである。

  • モブ兵士たち

どこの所属にせよ騎士道精神や武士道を持ち合わせた奴らが多く、そうでなくとも死を恐れず戦う身も心も軍人!みたいなやつらばかりだった。
まあ弱きをくじく簒奪者もいるにはいたけど末端はそういうもんだ。当然当然。

そんな意識の高いモブの中でも特に好きなのはOZに懐柔されたコロニーの人々の目を覚まさせるためならコロニーとともに撃ち落されてもいいとのたまったおじい様とその孫。
主砲はそれたためそのコロニーは無事だったけど覚悟が高潔すぎる。しびれた。

あの世界の戦場に出た者たち、妙に心構えが高潔というか自らの命すらも駒として戦っていてスゲ……ってなる。
トレーズの「無駄な死など一つもなかった」という発言は、その前に発した例の発言とこれまでに登場した高潔なモブたちによってものすごい説得力になったように思う。

EWの立ち上がる民衆も然り。
ずっと大局に流されていた民草たちが叱咤激励やリリーナ様のサンクキングダムの下積みありきとはいえ平和のための武器を持たない戦いを始めるあたり、あの世界相当に民度が高い

というかEWの大団円に持っていくにはこのくらい民度が高いのが絶対条件だと思う。


メカについて


人物だけでなく、登場するガンダムや量産型モビルスーツも人気が高いと聞く。
わかる。

主人公機は5機ともそれぞれの個性と格好良さがあってよかったし、ライバル機となるトールギスの中世の騎士的ビジュアルとガンダムの前身機であることも納得な武骨さや、エピオンのいかにもライバル機!って感じのカラーリングと装備も良かった。
エピオンのあの中2心を揺さぶる格好良さはなんなんだろな……

中2心と言えばデスサイズヘルって名前も好き。デスサイズでヘルだぜ。
ステルスで隠れて接近し、意表を突いていいタイミングで登場するので要所要所の演出もニクい。


そんな個性あふれる味方機ライバル機含めた機体の中で一番好きなのは、前編でも少し言及した通りヘビーアームズです。
開幕ミサイルぶっぱで面の制圧を狙う脳筋戦法最高!
色合いはTV版が好きだけど両手ガトリングのEW版もイイ。フルアタックはロマンですぞ。
ミサイル打ち終わったら片手のナイフしかないらしいんだけどそれはそれで潔い。
ビームサーベル一本くらいつけといてもいいんじゃないかな……


量産型はリーオーもシブいがトーラスエアリーズが好き。

トーラスは線が細くて洗練されたデザイン感が好き。MDの第一弾だったからこそのシンプルさというか。
MD後継機ビルゴのマッチョ感も好きだけどね。ビルゴはバリア貼れるから的が大きくても無理がきくのかな~とか二機の違いを比較するのも楽しい。
MDはいかにも無機質というか、無人機っぽい空恐ろしさを感じてナイスデザインだと思う。
ノインさんの機体はそんな感じしないから色合いって大事なんだなって。


エアリーズはあの飛行専用っぽい脚の貧弱さジェットが付きまくったずんぐり上半身のアンバランスさに愛嬌を感じる。アンバランスは人を惹きつける。
機械なのに生物的な進化退化の名残っぽいものが見えるの、なんだかとてもフェチです。
あの噴射口たちは全部違うベクトルを向いてるから空中で出力を変えて自在に動かすのかな〜とか思うとロマンだよな。

操縦は大変そうだけど乗るならヘビーアームズかエアリーズがいいな。
一点特化型が好きなのかもしれない。


あとは何より我ら(?)がセンター、ウイングガンダムウイングゼロ
なんだかんだ一番最初におっ!と思ったのはウイングの飛行形態からモビルスーツ形態へのトランスフォームだった。
あの直線の機械的な羽もかっけ〜ぜ。
そしてガラッと羽のデザインが変わったEW版。初見ではその羽の形状にビビりちらした。

その羽どうしたゼロ!?!??

まあでも見てるうちに段々「ええやん……」と思いはじめました。
特にEW最後のボロボロになって崩れ落ちるさまはあの有機物的な羽によって朽ちていく美しさを絶妙に醸し出していたというか……

直線的な無機物のガンダム有機物的な曲線で出来た羽という組み合わせってなかなかに冒険的デザインなんじゃないかと思う。
すげえぜ。


そんな感じで終始ロボのビジュアルと活躍にキャッキャしていた。
素人目線なので詳しいことはわからんけど楽しいからヨシ!

もともとメカは好きなので*2、アニメで動くメカたちを眺めていたらガンプラが欲しくなってしまった。

営業さんにガンプラについて聞いたところ、ゼロの派生?がエグいくらいあることしかわからなかった。アーリー?プロト?カスタム?
とりあえず新しく出たゼロがおすすめらしいので今度電気屋とかに見に行こうと思う。あるのかね?

20も後半になってガンプラ始めるのもどうなんだ?
どうしようもないよ。(自問自答)


好きなシーンの列挙


戦闘シーンとか細かいものも挙げてくときりがないので絞りに絞って、TVとEW合わせて特に好きなシーン10選!
10選に含め忘れたけどヒイロガンダム自爆シーンも好き。カメラワークの気合いの入り方がすごかったね。
多分時系列順。

  • サリィがヒイロに爆弾処理を依頼するシーン

「自慢したいの。爆破阻止をやってのけるヒイロ・ユイを知っていることを。」という全面的に主人公を信頼しているサリィさんのセリフがすごくイイ。
いろいろやっちまった感の漂う空気の中、とにもかくにもやらなきゃならん事を示されてヒイロも視聴者もちょっと救われたと思う
あと爆弾処理はアクションスパイもの(?)の醍醐味なので見栄え的にも好きなシーン。
サラッと流されるが力の入らなそうな体勢で鉄格子を粘土の如く捻じ曲げるヒイロのゴリラっぷりにしびれた。拙者ギャグみたいなレベルの怪力キャラ大好き侍。

  • トロワがバイクで車を撒くシーン

ヒイロとトロワがノベンタファミリーへの謝罪行脚帰りにつけてきたOZ?の車を撒く一連のアクション。
一瞬で調達した赤いバイクで華麗に路地を抜け、バイクを乗り捨て、3回転半(くらい)をキメて物干し糸に着地(着糸?)し、糸の上を歩いて立ち去るトロワが死ぬほど面白くて好き。
その後に落ち合った倉庫でヒイロが林檎を投げるのも含めて完全に洋画。
ああいうクールな面白スパイアクションノリは楽しくていいよね。ガンダムとは?

  • デュオとカトルが宇宙に戻ろうと飛行場に攻め入るシーン

敵の物量に圧倒されあわやこれまでか!?というところで、俺たち良いことしようとしてるはずなんだけど何でこうなるんだろな……とボヤくデュオ。
そこに「それは俺たちが正しいからだ!!!」と答えながら颯爽と登場したシェンロンガンダムと五飛!まさか五飛が助っ人に来るとは思わなかったので「うおー!!!!」と叫んでしまった。
凹んでる時に自分たちは正しいと断言しながら助けに来てもらえることほど心強いこともそうなかろう。
その後のサンドロックの自爆もよかった。組み込まれたシステムだとわかっていてもガンダムパイロットの繋がりのようなものを感じられるイイシーンだった。

  • サンクキングダムでヒイロとリリーナが再会するシーン。

ジェット機から降りてくるヒイロに何も言わず、手すりに頬杖を突きながら不敵な笑みで見上げるリリーナ。
年相応な、勝気な少女って感じの出迎えが可愛すぎて最高だなって……
そしてそんな表情を出せるのはヒイロの前だけなんだよなあと思うとやるせない。何度も言うがやるせない。
世界の平和とかいろんなもんを背負うことになるリリーナ様のこんな表情が見られたのはEDを除いて後にも先にもここだけなので大事にしたいなと思いピックアップした次第。

  • ヒイロロームフェラ財団に潜入しクイーンリリーナを暗殺しようとするシーン

暗殺された伝説の平和論者ヒイロ・ユイの名をコードネームに持つ少年が、新たな平和的指導者として祀り上げられる少女の暗殺を目論むのがドラマチックかつ運命的。
このシーンの何が好きって、平和論者(ヒイロ・ユイあるいはノベンタ元帥)の暗殺という繰り返されてきた負の連鎖を断ち切るという未来への確かな一歩を踏み出した点である。
その後もゼロシステムに飲まれてコロニーを破壊しそうになるトロワを止めるカトルなど、それまでに起こってきた過ちが繰り返されるのを未然に防ぐガンダム勢が見られるわけだが、その契機はおそらくここだと思う。ヒイロの迷いがようやく消えたのも。
そしてリリーナの完全平和主義が受け入れられたと思った次の瞬間に「そうそう簡単に争いの連鎖は止められませんぞ~www」とでも言いたげにコロニー革命軍ホワイトファングが登場するシナリオの念の入りようには感心する。

  • カトルとドロシー一騎打ち

出撃Gチームでのドロシーとのゼロシステムによる擬似バトルを経てのフェンシング一騎打ち。
TV版でいちばん好きなシーン。
学園での一時的な交流でしか面識がないだろう2人がお互いの名前を言い当て合った1回戦ゼロシステムバトルはめちゃアツかった。
そして2回戦フェンシング。
奇抜な発言の目立つもののいまいちその真意がわからなかったドロシーの内面を激情のまま吐き出す相手が、同じく父を戦争で失ったカトルというのが絶妙だな~と思う。
苛烈にならざるをえなかった優しい女の子と一度は道を踏み外しかけた優しい男の子という対立関係、最高だぜ。

それはそれとして事が終わって助太刀に来たトロワが最後に「悲しいな、泣くことの出来ない女は……」と言ってドロシーを置いて去っていくのは爆笑した。
トロワの「女」について言及する発言が一々ハードボイルドで笑っちまうんだ。

  • 地球をバックにしたゼロとナタクのバトルシーン

戦闘シーンいいよね。いい……
戦闘はもちろん、平和を信じようとするヒイロと変わらない世界への憤りをぶつける五飛の舌戦もいい。
戦争って終わればそれで済むもんでもなし、そこまで尽力してきた兵士や兵器をあっさり手放すことは正義なのかという五飛の投げかけも真っ当である。
それを受けての過ちを繰り返さない為にも世界を信じてみろと言ってのけるヒイロの成長っぷりよ。
「教えてくれ五飛」から始まるヒイロの台詞も身につまされるものがある。
ヒイロの殺しきれなかった人間性はもう限界だったんじゃよ。

  • ドロシーが民衆を焚きつけるシーン

「私の知っている男たちは、墓の下か、あの中(戦場)にしかいないわ!」
最高。なにより台詞が格好良すぎる。
TV版のドロシーが絶望するくらい徹底的にやらないと終わらないと言ったとおり、また戦争を始めようとする人類。
そこでドロシーがやっぱり繰り返すんじゃん!民草は愚か!と絶望するのではなくて民衆を信じて焚きつける方向に舵をきったの、成長だな〜と嬉しくなった。
登場したトラックでゴールデンなのは一台のみなの、自家用トラックとその他調達してきたトラックなんだなとリアルが感じられてなんか面白かった。

  • リリーナが倒れるヒイロを抱きとめたシーン

あまりうら若い少女に母性を押し付けたくないのだが、「終わったわね、やっと……」と優しい声で語りかけ気を失ったヒイロを静かに抱きしめるリリーナ様には思わず「ママ……」と口ずさんでしまいました。懺悔します。
あの時の二人の優しげな顔(片方失神してるけど)と、TV版とは打って変わって静かな決着がやけに印象深い。
少年少女の一年は長いし重いよなあ。
思えばこの二人がしっかり触れ合っているシーンてTV序盤のダンスとこの時くらいしかない気がする。それどころか一緒の場面にいるのもそこそこ珍しい。なんと硬派なカップルか。

  • Gパイロットたちがそれぞれの戦後を歩むシーン

とりわけ雑踏に消えるヒイロはいい終わりだな~と思った。
五飛への心情の吐露や「もう誰も殺さなくて済む」といって気を失った彼を見て、戦いたくないけど状況と能力と責任感がそれを許さなかったんだろうなと考えると、あのラストシーンは彼にとって最上級のハッピーエンドって感じでしみじみする。

そしてただの一般人として雑踏に消え行くラストが良かったなと思う反面、その場合リリーナとは一緒になれないよなあとも思う。
リリーナが表舞台に立つ以上ヒイロが一般人でいられるはずもないと思うのでどうにもね。
リリーナ様には妥協する道を進んでほしくないし、ヒイロヒイロでだいぶ精神の限界がきてたので無理はさせないほうがよさそうだし……
歩む道は違えどもお互いの存在を支えに道を突き進む感じがベストなのだろうか。

私の好きな漫画*3に、ある事件をきっかけに惹かれあうも刑事と犯罪者の親族という関係になってしまったために結ばれることのなかった男女がいたのだが、その決別のセリフが「刑事を辞めるつもりはないからお互い老後に」というものだった。

あの覚悟とやるせなさがめちゃくちゃに好きなので、この2人に似た空気を見た私は苦しみと喜びを同時に抱いたのだった。


その後ぐぐったらWには続編?小説があるらしく、そこでは2人が結ばれるハッピーな結末だったらしい。
のだが、2人は冷凍睡眠で数十年眠っていたとか、またガンダムが登場したりとか映画のハッピーエンドがいろいろ台無しな気がするアレだったので諸々見なかったことにした
モビルスーツが2度と登場しない世界で普通に皆と同じ時を歩んでくれ。
営業さんも映像化されたもの以外は正史とはちょっと違う扱いって言ってたし!
宇宙世紀だけの話かもしれないけど!!!


最後に


ちなみにこの前後編にわたる記事は営業さんに送った感想文をもとにして書かれたものだった。主に後編。
そしてそれがいつの間にか2倍くらいに膨れ上がっていた。こわ……
こんなに長文を書いたのは修論以来だぜ。
そして書くのに1ヶ月以上かかったぜ。

しかし、感じたことや思ったことを出力するバイタリティを失った社会人がこのように約2万字に至る長文感想を書き上げるくらい楽しい作品と出会えるなんてなかなかないことだと思うし、非常に得難い経験だった。
貴重な出会いを提供してくれた営業さんには感謝感謝感謝である。

しかし疲れるものは疲れる!
これを機にアニメを観る習慣が生まれたりだとかガンダム全作品制覇してやらぁ!だとかにはならない。
大人って悲しいね……


ただ、本作以外にも惹かれる作品は複数出来たし、いつか観たいという思いは生まれたので案外アニメに対するフットワークは軽くなったのかもしれない。
そしてそれに関する感想文もいつか書かれる時がくるかもしれない。

いつになるかわからないが、待て、次回!



追記:Gガンダム観ました。書きました。
3monopera.hatenablog.com

*1:一部前髪が凄かったり眉毛が凄い人もいるにはいるけどキャラクター的アイコンってことで一つ……

*2:わたしの無機物フェチはフラバーのヴィーボで種をまかれ、PORTALのグラドスで芽吹いた。

*3:『ROUTE END』。派手さは無いがめちゃくちゃ好きな作品。ラストこそ賛否別れる結末だが、犯人の種明かしに向かってゆく表現力とカタルシスは一級品。